韓国人犠牲者名簿発見 韓国政府も苦悩

2013年11月20日 18:18

戦時中、日本に強制徴用された被害者への賠償問題に苦慮する韓国外交部は、今夏に完了した東京の韓国大使館の新築・移転作業で、日本統治時代の被徴用(徴兵)者名簿、3・1独立運動(1919年)と関東大震災(1923年)の際に殺害された韓国人犠牲者の名簿が見つかったことによって、さらなる問題に直面している。被徴用者名簿と一緒に発見された3・1独立運動(1919年)と関東大震災(1923年)の犠牲者名簿も19日に公開され、戦後賠償問題をめぐる韓国政府の立場をあらためて整理せざるを得ない状況となった。外交部はこれまで1965年の「日韓請求権協定」で解決されたとみることができない事案として、①旧日本軍の慰安婦被害者②サハリンに強制動員された朝鮮人労働者③原爆被害者を挙げている。これに該当しない事案についての賠償は、事実上、日韓請求権協定で解決されたというのが韓国政府の立場である。しかし、韓国外交部は昨年5月の強制徴用者の賠償請求権は消滅していないとした大法院(最高裁判所)の判決に続いて、強制徴用被害者個人に対する司法の賠償判決が相次ぐと、「現在、司法手続きが進行中」との理由から、立場表明を先送りしている。今回発見された3・1独立運動と関東大震災の犠牲者名簿についても、「名簿の内容などについて詳細な分析が必要だ」と述べるにとどめている。外交部はこれらの事案について慰安婦問題のように日本政府に対する法的責任を問えるか、慎重な姿勢を取っている。3・1独立運動で日本の憲兵が民間人を殺害したのは日本政府の行為として責任を問うことができたが、日韓請求権協定の交渉過程で韓国側は日本に対し「独立運動の犠牲者がいるが、賠償を請求しなかった」と言及した内容があるとされる。関東大震災の場合は、市民らによる自警団により虐殺されたケースが多く、政府間の賠償問題とみることができるか検討を重ねている。ただ、日本の加害行為を示す資料が発見され、韓国内では政府が必ず日本政府に責任を問うべきだとする世論が高まっている。さらに、3・1独立運動と関東大震災の犠牲者遺族が個別に訴訟を起こし賠償請求権があるとする結論が下される可能性があることも外交部の足かせとなっている。今回見つかった資料には3・1独立運動の犠牲者名簿には、殺害された630人の名前、年齢、住所、死亡した日時や場所、状況などが地域ごとに記録されている。現在、3・1独立運動に加わり死亡した人々のうち、「独立有功者」として認められている人は391人にすぎないが、名簿の発見によりその数が3倍近くに増える可能性もある。また、関東大震災の犠牲者名簿には、震災時に殺害された韓国人290人の名前や本籍、死亡した日時や場所、状況が記されている。 震災時に殺害された韓国人数は6661人から2万人と推定されているが、今回初めて具体的な犠牲者名簿が見つかった。