親日人名辞典、買いません
ソウル市教育庁(서울시교육청)が管内の中学・高校に「親日人名辞典(친일인명사전)」を購入せよとして組んだ予算に対し、ある私立高校が「返納(반납)」の意向を表明した。「親日人名辞典(친일인명사전)」とは、朝鮮半島がかつて日本の支配を受けていた時代、日本に協力したとして、左翼系の民族問題研究所(민족문제연구소)が一方的に「親日」とレッテル貼りした4389人について、その行跡などを紹介するため同研究所が2009年に発行した人名辞典のことだ。ソウル市竜山区のソウル・デジテック高校(서울디지텍고)は11日、「教師会議と学校運営委員会で協議し、親日人名辞典の購入予算30万ウォン(約2万8000円)を返納することに決めた」と発表した。1校に30万ウォンずつ、合計583校の中学・高校に割り当てられた親日人名辞典(친일인명사전)購入予算を返納することにしたのは同校が初めてだ。こうした返納決定がソウル市内の他校に広まるかどうかに注目が集まっている。2014年12月に当時の新政治民主連合(現在の「共に民主党」)所属議員が多数派のソウル市議会が、親日人名辞典(친일인명사전)を各校に配布するための予算案を提出・可決させた。「ドイツでナチスの過ちをありのままに教えるように、韓国も親日について徹底的に教育すべきだ」という理由からだった。しかし、民族問題研究所(민족문제연구소)が発行した親日人名辞典(친일인명사전)は発行前から公正性・客観性をめぐり議論があった。1905年に乙巳条約(日本での呼称:第二次日韓協約)を批判する論説「是日也放声大哭(시일야방성대곡)」を書いた張志淵(チャン・シヨン:장지연)を掲載した一方で、親日だと取りざたされた左派系の人物は除外するなど、それぞれの人物に対する歴史的功罪評価が恣意的だと批判の声が上がっているためだ。ソウル市議会で予算案が可決されて以降、教育・市民団体や保護者団体などは「政治的・理念的に偏向した親日人名辞典を学校の図書館に置いてはならない」と強く反発した。予算執行を1年間先送りしてきたソウル市教育庁は4日、管内の中学・高校583校(公立311校、私立272校)に予算額1億7490万ウォン(約1600万円)を支給、今月26日までに予算執行状況を報告するよう指示した。親日人名辞典は1セット3巻からなり、価格は30万ウォンだ。ソウル・デジテック高校(서울디지텍고)のクァク・イルチョン(곽일천)校長は11日、本紙の電話取材に「まだ客観性が確かでない本の購入を学校が強要されるべきではないと判断した。歴史教育の参考になる別の本を買ってもいいか教育庁に12日に問い合わせ、もしだめなら予算30万ウォンを返納することにした。教科書選定や参考資料の購入は学校が責任と権限を持って決定しなければならない」と語った。これに対してソウル市教育庁(서울교육청)関係者は「親日人名辞典を購入するという目的を明示して支給した金額なので、学校は予算執行の義務がある。学校の自主判断で予算執行するかどうかを決定することはできない」と述べた。韓国最大の教員団体「韓国教員団体総連合会」は「教育庁は予算不足を理由に『ヌリ課程(満3-5歳に対する教育・保育課程)』の予算は組まないのに、学界で理念論争がある本を一括配布しようとしているのは理解しがたい」としている。同会の関係者は「学校が独自に親日人名辞典を購入するかどうか決定するべきで、教育委員会が強制してはならない」と言った。