文昌克韓国次期首相候補辞退 韓国のメシア思想

2014年06月24日 18:56

韓国の新首相候補(국무총리 내정자)に指名された文昌克(문창극)元中央日報主筆が2011年、在籍するキリスト教会(기독교회)での講演で、日本による植民地支配と南北の分断は『神の意思だ(하나님의 뜻이다)』と主張したほか、民族をおとしめる趣旨の発言をしたとして批判されているとして、国内世論が紛糾する中、今日遂に首相候補を辞退した。日韓両国メディアが報じた「日本による植民地支配と南北分断は神の意思だ」という文氏の発言内容を日本人には理解できなかった。韓国のキリスト教会には久しく「メシア思想(메시아 사상)」がある。受難の歴史を歩んできた韓国民族にイエス=キリストが再臨し、救済してくれるという思想だ。ここで大切なのは 文氏は一般国民の前で語ったのではなく、キリスト教会で信者たちを前に語ったということを忘れてはならないだろう。韓国に救い主が再臨するという予言書がある。著名な予言書「鄭鑑録(정감록)」(18世紀半ば、突如として朝鮮半島に現れた予言書)には具体的に記述されている。だから、メシア待望論は弥勒信仰と結びついて韓国民族にとって決して特異な思想ではないわけだ。例えば、韓国発祥の新興宗教・世界平和統一家庭連合(세계평화통일가정연합)の創設者文鮮明(문선명)師は生前、神が韓国民族を「第3イスラエル」に選んだと主張している。彼によると、神が韓国民族を選民として選ぶためには、韓国民族は「40数に該当する試練の期間」を体験しなければならない。イスラエルが選民として神のみ旨を履行するためサタンの地エジプトで400年間苦役した後、モーセを中心に出エジプトをし、イスラエル民族の基盤を形成していった。ユダヤ民族がイエスをメシアとして受け入れずに殺害した後、イエスの福音を信じるキリスト信者が第2のイスラエル選民の立場に立ち、当時サタンの世界であったローマ帝国下で400年間迫害を受けた。同じように、第3イスラエル民族として韓国民族は約40年間、日本の植民地化を体験し、世界的福地復帰を成し遂げる使命があった、というのだ。具体的には、1905年の韓国保護条約(乙巳保護条約:을사보호조약)から1945年の解放(해방)までの40年間ということだ。韓国首相候補者の文昌克(문창극)氏が文鮮明師の選民思想を知っていたかは不明だが、文氏の「神の意志(하나님의 뜻)」という表現は明らかに文鮮明(문선명)師の再臨論の内容と一致する。その意味で、「日本の植民地支配が神の意志に基づく」という内容は韓国民族のメシア思想と理解すべきだろう。日本人には理解しにくい内容だが、韓国キリスト信者や弥勒信仰者にとって決して奇抜な内容ではないのだ。「南北分断」についても、神は最終的救済摂理では、世界を神側とサタン側に二分し、神側代表の韓国、サタン側の北朝鮮が対立する情勢が生まれてくる。だから、「『南北分断』は神の意志にかなったものだ」という文昌克氏の発言となるわけだ。文氏の立場からいえば、韓国で今日みられる反日運動は、「神の意思(하나님의 뜻)」に反対する運動ということになる。「日本の植民地支配」を「神の意志(하나님의 뜻)」と受け入れることで、選民としての韓国民族の誇りを保つことができる一方、日本を許す心も生まれてくるのではないか。その意味で、文氏の発言は韓国民族の過去問題を乗り越えていくうえで大きなインスピレーションを与えているのだが、首相候補を辞退したことは日韓関係においても非常に残念な気がする。