恩師の資格あるのかを反省しつつ

2013年05月15日 19:43

毎年5月15日「教師の日」には、韓国全土で鳴り響く歌があるが、それは「師の恩恵(스승의 은혜)」である。 儒学の李基東(イ・ギドン:이기동)成均館(ソンギュングァン:성균관)大学院長(62)は約20年の間、学生が自分のためにこの歌を歌うことを止めた。「師の恩恵は空のようで」という文句のためだ。 2008年1月に、一度だけ歌わせたことがあった。当時、李院長と成均館大学大学院儒学科の学生約20人は、論文発表会を兼ねて慶尚北道安東市陶山面の陶山書院に行った。一行は、退渓李滉(テゲ:퇴계、イ・ファン:이황、1501~1570)先生の位牌が祀られた書院内の尚徳祠を参った。李院長は、「退渓先生ほどの存在になってこそ、恩師と呼ばれるに値する。今日は『師の恩恵』を歌ってもいい」と言った。学生たちは歌を合唱し、書院の人々は不思議そうに見ていた。大学院生の中には退渓先生の17代子孫であるイ・チオク(이치억)博士(38)もいた。 教師の日の前日の14日、ソウル鍾路区明倫洞)の成均館大学で、李院長と教え子のイ博士が会った。イ博士は2002年、成均館大学大学院儒学科に入学し、李院長の指導の下、退渓哲学を研究して博士号を取得した。李院長は、「師の恩は空のようだというが、果たして私が歌を歌ってもらう資格があるのか、いつも反省した」と話した。イ博士は、先生がいない席で、「教え子である私にとって、李先生は理想の教師だが、自分で恩師と認めようとしない」と話した。 李院長は、教師が教権をふるって教え子を扱ったり、教権が失墜し、教え子が教師に暴言を吐き、暴力を振ったりする昨今の事態の責任を「師の仮面」をかぶった教師のせいだと考えている。成績で教え子を評価し、知識だけを伝授する教師だ。 この問題の解決策を退渓先生から得た李院長は、「両親が子どもの幸福を望むように、教師も教え子が幸せであることから望まなければならない」と述べた。師弟関係が親子のように厚くなれば、力関係に変質することはないと言う。李院長は、「親子が力関係になれないように、教師が教え子を自分の子のように考えればよいし、教え子は困った時には教師に助けを求め、迷惑をかけてもかまわない」と話した。 多くの人が「教師の日」にどんな贈り物をするか悩む。李院長は、「教え子が真理をつく質問をする時、それが最大の贈り物だ」と答えた。
 

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