安倍首相の「発言」 北東アジアの外交構図に大影響

2013年04月24日 21:19

安倍晋三首相が国会答弁で侵略の歴史を否定したことにより、日韓関係が急激に冷え込み始めた。昨年悪化した日韓関係を修復し、「関係安定化」を目指す韓国新政権の目標も実現困難となった。韓国政府は「歴史の直視」が両国の新しい未来関係の出発点になるとしてきた。朴大統領は「3・1独立運動」の記念日に行った演説で、「加害者と被害者という立場は1000年の歴史が流れても変わることはない」と強調した。それに対して安倍首相がこの23日の参院予算委員会で「侵略という定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国の関係でどちらから見るかで違う」と述べたことで朴大統領の発言と相反することとなった。実は現職の日本の首相がこれまで侵略戦争を正当化する発言をしたことはなかったため、韓国政府では日本政府の過去の歴史を否定する動きが本格化したのではないかと考え始めている。日本政府では3閣僚に続き、過去最多の168人の国会議員が靖国神社を参拝したり、「竹島の日」の式典開催や外交青書などを通じ右傾化的姿勢を強めてきたが、こうした状況を踏まえると、両国関係が改善するまでは相当な時間がかかりそうである。朴大統領と安倍首相が率直な対話をしなければ、関係の回復はありえないのであるが、10~11月までは会う機会自体がなさそうである。実際、5月に予定されていた韓日中首脳会談も延期され、朴大統領の訪日も全くめどが立っていない。それどころか、7月の参院選後の8月の終戦記念日には靖国神社参拝問題が再燃する可能性がある。そのため、日韓首脳会談は早くても11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の期間中になるという見方も出ている。韓国政府当局者間では、これまでの北東アジアの外交の流れが「日米韓」中心だったが、これからは「米中韓」中心になる可能性があるとの指摘も出ている。これは日本としても最も憂慮すべき事態である。安倍首相は、日本が東アジアのリーダー国であり続けるのならば、「強い日本」を強調することも大事だが、政治や社会環境が似ている隣国の韓国と仲良くしていかなければ、東アジアのリーダーの位置を中国に取られかねないのである。事実、日本と韓国との対立局面が続くなか、中韓はいつになく緊密である。朴大統領は就任前に真っ先に中国に特使を派遣したし、先月20日には、習近平国家主席に中韓国交正常化後の韓国大統領としては初めて国家主席就任を祝う電話をかけるなど、緊密な関係をアピールしている。朴大統領は来月初めに米国を訪問後、2番目の訪問国として中国を選んだとされる。尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官は24日に訪中し、李克強首相を表敬訪問した後に王毅外相、王家瑞共産党対外連絡部長と面会する予定で、親密な中韓関係が反映されているという声が聞かれる。尹長官は同日、中国側指導者らと北朝鮮の核問題など対北朝鮮協調策や韓中首脳会談など両国の懸案について話し合う予定だが、その席で両国が過去の侵略の歴史を露骨に否定する日本に対し、そろって懸念を表明する可能性も提起されている。韓国サイドからは日米韓より米中韓の3カ国での話し合いがより重要になるという声が出ているのが、本当に憂慮すべき事態となりつつある。