事故死の在日アイドルを苦しめたネット社会

2014年09月16日 18:49

今月7日、ガールズグループLADIES’ CODE(레이디스코드)のメンバー、クォン・リセ(권리세)さんが23歳の若さでこの世を去った。3日午前、高速道路で交通事故に遭い、病院に搬送されて4日後のことだった。LADIES’ CODE(레이디스코드)は昨年3月にデビューし、ミニアルバム2枚とデジタルシングル2枚をリリースしたが、歌謡界でブームを巻き起こしたグループではなかった。そんな中で世間にその名が知れ渡ったメンバーがクォン・リセ(권리세)さんだった。リセ(리세)さんは2010年、MBCテレビのオーディション番組『偉大なる誕生』に出演した。在日韓国人4世のリセさんは2009年、ミスコリア日本で「真」(グランプリ)を受賞したことが知られ、注目を集めた。オーディション番組で破竹の快進撃を見せるや「実力よりも外見で選んでいる」「歌手のオーディションなのか、ミスコンテストなのか」などと批判する声が殺到した。だが、さまざまな罵詈雑言にもかかわらず、リセ(리세)さんは同番組で12位にまで上り詰めた。故人となった今、その死を悼むコメントが相次いでいるが、生前のリセさんはインターネット上の悪質なコメントに苦しめられていた。福島県で生まれ育ったリセ(리세)さんを「日本女」と呼ぶのは序の口だった。リセさんに関するニュース記事のコメント欄には、とても口にできないような悪口があふれていた。悪質なコメントは、アイドルやガールズグループにとって避けて通れない宿命だ。出所の分からないうわさ話はどうすることもできない。リセ(리세)さんは日本で、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)系の朝鮮学校に通った。リセ(리세)さんの話す韓国語に北朝鮮なまりが見られるのはそのためだが、これが原因でリセ(리세)さんには「アカ(共産主義者)」という悪口が浴びせられた。リセ(리세)さんは「家の周りで韓国語を学べる場所は朝鮮学校しかなかったため、ちょっとの間通っただけで、北朝鮮とは全く関連はない」と釈明した。小学校時代に民族舞踊を習ったリセ(리세)さんは、北朝鮮の故・金正日(キム・ジョンイル)総書記の誕生日パーティーに招かれ、舞台に立ったこともある。このような事実をもって「リセさんの容貌が北朝鮮応援団に似ている」と発言する人もいた。リセ(리세)さんが16歳のときに他界した父親は、リセ(리세)さんが中学校に入学したとき、朝鮮総連から在日本大韓民国民団(民団)に移った。リセ(리세)さんは生前、つたない韓国語でこう言ったことがある。「幼いころから歌ったり踊ったりするのが好きだった。歌手になるならば、韓国でデビューしたかった。これといった理由はないが、いつも韓国に憧れていた。日本に進出するとしても韓国人として、韓国を知ってもらうために貢献したい」心ないコメントはリセ(리세)さんの死後にも寄せられた。「LADIES’ CODE(레이디스코드)ではなく、LADY DEATH CODEだ」「死ぬ1週間前にサインをもらったが、値段はどのぐらいになるか」といったものだ。リセ(리세)さんは亡くなる1年前の昨年9月6日、国会で行われた「アンチコミュニティーに打ち勝つ善プル(ネット上の善良なコメント)コミュニティー」キャンペーン発足式に出席した。ネット上にはびこるアンチコミュニティーサイトや悪質なコメントの代わりに、互いにやさしい言葉を掛け合うコミュニティーサイトを増やしていこうというキャンペーンだった。このとき、リセ(리세)さんは国会の政論館で、自分に対する悪質なコメントを読み上げた。9日に告別式を終えたリセ(리세)さんは、この世に永遠の別れを告げた。事故原因を究明するため、事故を起こした車は国立科学捜査研究院に送られた。しかし、悪質なコメントは今も、ネット上のあちこちに、ごみのようにあふれている。